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VoIP無線ノード運用の法律問題 トーンスケルチ運用は違法か? |
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最近、インターネットの掲示板を中心に、トーンスケルチ運用は違法ではないか、という意見が出てきたりしています。結論から言えば、トーンスケルチ自体は違法ではありませんし禁止事項でありません。秘話ではないかという意見もありますが、これはばかげた話で、トーンスケルチは当該局の受信の選択の問題であって、誰もが通信内容を傍受できるという要件を満たせば秘話ではありません。無人運用も禁止という条文すら見当たりません。この違法性の指摘は監査指導員からも来たというウワサですが、それがもし本当であれば監査指導員の質を疑います。 さて、問題は「混信を与える可能性がある場合に電波を発射してはならない」という定めがトーンスケルチや無人運用では担保できないので問題だといわれている件です。最近、なぜかトーンスケルチ=違法という情報が一人歩きしだしました。今回は、これらが本当に違法かどうか法律的な側面から検討してみましょう。 結論から言えば、これらの論調は自由に色々な形態で楽しめるアマチュア無線の存在意義の根底を揺るがす行為だと私は判断し反論します。しかも、多くのVoIP無線愛好家が使用頻度の低い周波数を探し出して、節度をもった運用をおこなっていると思います。ただ中には、心無い人たちもいるかもしれませんが、それはほんの一握りです。以下の解釈はこれらの違法論に反論するものです。ただ、配慮なき運用は法律では保護されません。しっかりと真面目に運用している方には心強い解釈となる事を願ってやみません。 さて、早速各用語の定義から考えてみましょう。まずは関係する条文をピックアップします。 無線局と混信の定義 ■用語の定義 (電波法) 第二条この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
(電波法施行規則)(略) 四
「無線設備」とは、無線電信、無線電話その他電波を送り、又は受けるための電気的設備をいう。
五
「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。
六 「無線従事者」とは、無線設備の操作又はその監督を行う者であつて、総務大臣の免許を受けたものをいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。 第2条64項 「混信」とは、他の無線局の正常な業務の運行を妨害する電波の発射、輻射又は誘導をいう。
(電波法)
■無線局の混信回避義務 一般 第56条 無線局は、他の無線局又は (中略) その運用を阻害するような混信その他の妨害を与えない
ように運用しなければならない。(以下略) ■無線局の混信回避義務 アマチュア局の例外規定
(運用規則) 第258条 アマチユア局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用又は放送の受信に支障を与え、
若しくは与える虞があるときは、すみやかに当該周波数による電波の発射を中止しなければ ならない。(以下略) ■混信についての解釈 ・・・ 害がなければ混信ではない 混信という状態は、正常な業務がおこなわれている最中の無線局の双方が実際に通話困難になるという要件が満たされて初めて混信が成立するという事と読み取れると思います。さらに、正常な業務とは、通信が滞りなくおこなわれる事(正常な通話)と、そこで通話する事が許される無線局(正常な無線局)の通信であると考えられます。正常な無線局に対する妨害は「混信」となり、不法局(遺法局)に対する妨害は混信の要件は満たさないと考えるのが妥当でしょう。というのも、混信という根拠のもとに不法局(違法局)の通信が法のもとに保護される合理的理由はないからです。 さらに、単に「聞こえる」という事だけでは混信の要件を満たしません。通信が妨害されない(実害がない)にも関わらず他局が入感するという事で、その他局に宛てて通話の中止を申し出るケース。これは混信の要件必ずしも満たさないと思います。混信を与える恐れがあるかその場での判断(簡単に協議して)での話になり、必ずしも絶対中止しなければならないという事にはなりません。 さらに、モービル局が通話中にロケーションの良い所に差し掛かったり同じ周波数で通信している固定局に接近した結果、混信を与えてしまった場合は、モービル局に送信の中止義務があると判断できます。これはモービル局側の都合で固定局に混信を与える結果に至ったわけで固定局側に中止義務がいきなり発生するのは公平でないからと判断できます。しかも、本例はモービル局を保護する定めがあれば別ですが、そのような定めはみあたらないのです。走行中に周波数を変更できないなんていうのは理由になりません。モービル局は周波数を変更しないで運用できるという定めもないからです。一旦安全な場所に車を停止させて操作せよと言われるのが関の山です。 ■VoIP無線ノードのトーンスケルチ利用は違法性はない?! 運用規則第258条によれば、自局の発射する電波が他の無線局の運用又は放送の受信に支障を与え、若しくは与えるおそれはないと判断できる時は電波の発射を中止する義務(運用を控える義務)はないと読めます。したがって、トーンスケルチを使って受信信号の選択をおこなっていても混信を与えるという恐れがないと認識すれば違法ではないのです。この良い例として、ローパワーで運用したり、空いている周波数帯を使うなどが良い例です。 法律の構成は、電波法第56条で無線局の混信回避義務を定めていますが、ここに運用規則第258条を置くことで、アマチュア無線に限っては混信の発生をそのまま違法とし強く禁止する事はせず、あらかじめ混信がある事を前提とし、混信を与えてしまった事やその恐れがある事を認識した時にすみやかに電波の発射を中止する事とし、混信した場合の対応義務を定めています。要するに「混信を与えている」と認識した時からすみやかに電波の発射を中止する義務があるが、混信の発生や被害は同じアマチュア同士、寛大に対応せよという事です。トーンスケルチを使ってワッチする事ができなくとも、免許取得者としての知識をもって、この周波数では混信の恐れがないという自己判断で受信信号の選択(トーンスケルチ運用)をおこない運用すれば万が一混信を与えてもそれに対して誠実に対応すれば違法性は問われないと解釈できます。 この条文の背景には、アマチュア局は、その目的にあるように「金銭的な利益ではなく専ら無線技術の興味をもっておこなう自己訓練・技術研究」です。この目的には混信の回避策は絶対に必要という事ではなく、そもそも、様々な運用形態があり、混信ゼロを前提とした世界ではない事を示しています。 極端な例ですが、電波の発射で隣家のTVに受信障害を起こしてしまった場合には、近所からの申告を受けた場合、すみやかに電波の発射を中止する行為はこの258条に基づきます。ところが、アンテナを立てた直後ならいざしらず、普段電波を出す度にいちいちご近所にお伺いを立てている人はまずいないでしょう。これと同じ条文内で扱われています。 では、確実に違法となるのはどういう場合か考えてみましょう。それは、トーンスケルチを利用して他の無線局の使用頻度が高い周波数でノード局を運用し、幾度となく混信与えてるようだが、それを認識しようとせず、何らの対策もとらない場合です。これは混信の認識がないと言い逃れしようにも、法律用語でいう「未必の故意」にあたり、結果として混信がある事を知っていたとみなされる事でしょう。この場合はどうあがいても対抗できないと思われます。要するに混信の発生を予想しながら積極的に混信の申し出を無視する為トーンスケルチを悪用したと判断できる場合です。にさらに、他局から混信の申告をうけ、それを無視しつづけて運用した場合にも「混信になる事を知ったにも関わらず電波の発射を中止しなかった」ので、運用規則258条違反となります。混信の申し出や指摘をトーンスケルチの活用のために受信できない事をもって、全てのケースで258条違反に直結させるのはいささか乱暴かつ自虐的ではないでしょうか。 ノードを開局する場合は、ノード運用を実際に始める前に利用実態を充分に確認した上で運用を開始し、混信を与える可能性が極めてすくない事を認識(調査結果を記録すると確実)した上で運用を開始するのが良いと思われます。それか、心配だったらパワーを最低限に絞って、安全を確認したうえで通常パワーにするなど、節度と配慮をもった運用が望まれるという事です。混信を起こしても知らん振り、シャックに居てもSメーターすら全く見ず、ほったらかしという状態はさすがにまずいでしょうが。 世知辛い世の中になりました。何かあるとスグに法律だというケースが多すぎます。基本的なルールを定め秩序を維持する側面のほか当事者の利害関係を調整する側面がありますが、どうも後者に触れる話が最近多いのです。アマチュア無線家同士の仲間意識が希薄になっているのでしょう。同じ趣味を志すもの、仲良くやればよいのにと心底思います。 現在、JARLの周波数委員会でもバンドプランの見直しが検討されています。その一部にはVoIP無線用周波数を割り当てて、他の運用形態の局とのトラブルを回避しようという内容もあります。とにかく前向きに皆で仲良く使えるアマチュアバンドになるように、皆で努力してゆこうではありませんか。法律論は最後の最後で良いと思うのです。 |
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(C) JS1CYI 禁無断転載 平成17年3月14日 平成17年3月20日改訂 |
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